【MR活動に役立つ】何回通えば自社医薬品は採用されるか?

今回は営業活動で重視される「訪問回数」について。
会社から一方的に降りてくる「訪問回数」。
でも規定の回数訪問したって未達の時もあるし、一体何を指標にしているのか?
そもそも頻回に通うだけで自社品が処方されるのでしょうか?
今回お届けする内容に関する前提として、
・競争が生じる薬剤を担当している(同領域に複数の薬剤が存在している)
・少なくともその医師から嫌われてはいない(出禁等ではない)
・その領域で競合他社から圧倒的製品力を持つ製品が発売されていない
というのが大前提になります。
一部スペシャリティケア領域の薬剤は、「それしかない」が存在するので、
今回の記事の内容は当てはまらないかもしれません。
(そもそもそんな薬剤は労せず採用されていると思います)
※圧倒的製品力の定義は、例えば有効率50-60%の製品が並ぶ中、100%治癒するとかそんなレベルです。
訪問→採用→処方するまでの流れについておさらい
まずなぜ訪問するか?当然自社医薬品の宣伝を行うわけです。
宣伝を行なった結果どうなるか?有用性を認識して使ってみようかな、となるわけです。
こうなればあとは薬審の手続きを経て(開業医の場合は省略することができて)、
自社医薬品の処方となります。実に単純な構図ですね。
…とはいってもこれが難しいから、僕らは頭を悩ませるわけですね。
どこが難しいと感じるでしょうか。
ほとんどの場合「有用性を認識して使ってみようかな」の部分だと思います。
ここに至らないということは、自社品の有用性は認識されていません。
あんなに宣伝しているのに?毎週訪問しているのに?訪問回数が足りない?
ということで訪問回数を増やすことが解決!…と信じられていますが本当にそうでしょうか?
100回の無駄な訪問は1回の感動に負ける
「宣伝」を「記憶」するを脳科学からみてみる
あれだけ訪問して宣伝しているのに、思っている以上に宣伝内容は記憶されていません。
人間は記憶するためには、なんらかのきっかけが必要なのです。
記憶とは何か?エーザイさんのサイトから引用しました。
いきなり脳科学の話になって来ましたが少しお付き合いください。
記憶するには海馬が重要です。
目や耳などの感覚器から入ってきた情報は、脳の奥深くにある「海馬」という部位で一時的に保管されますが、そのほとんどは消え去ります(忘却)。
忘却は第一ステップの脳が情報を受け取る「記銘」の失敗と言われています。
察しが良い皆さんはイメージされたかもしれませんが、我々の宣伝はこの時点で「忘却」されています。
ではどうすれば第二ステップにつなぐことができるか?
一回の感動が第二ステップに繋げることができる手段
大脳辺縁系のうち海馬は主に記憶に関与し、扁桃体は情動に関わると大きく分けられますが、記憶のうちでも情動と強く関連した記憶には扁桃体が重要な役割を果たしています。
小難しい単語が並んでいますので、ややこしいなと思う人はこれだけ目を通してください。
(詳しく知りたい方はリンク先を参照ください)
・記憶には「短期記憶」と「長期記憶」がある
・海馬に入った情報は「短期記憶」で、「長期記憶」に移行するには「扁桃体」の刺激が重要
・「扁桃体」は感動した時に刺激されることがわかっている
ということで、「感動」してもらうような面会が「記憶」に結びつくわけです。
「感動する」面会とは何か?
なにも素晴らしいデータを、スラスラと紹介するのが感動する面会ではありません。
担当医師の臨床現場に興味を持ってみて、必要なデータを届けてみる。
時にはそれが副作用の話になるでしょう。
新しく報告された副作用を医師が知らなかったとして、
該当する症例に使おうとしている場合、使用中止の提案こそが「感動」するデータかもしれません。
その一人は避けていただいて、自社品の有効性はこういう人に役立つ、と紹介すれば、
「有効性情報」×「感動」の出来上がりです。
あとは誰しも感動するのが、自分が知りたい困っていることに回答が得られた時。
ということは、何に困っているかを聞いてみればいいのです。
ただし、「先生最近なんか困っていますか?」なんて聞いても、
「何にも困ってないよ」と返されて終わってしまうでしょう。
こんなことに困っているのでは?と考え抜くのがMRの仕事かもしれませんね。
(医療制度、症例、副作用、高齢者、講演控えている等々…色々考えてみましょう)
我々の仕事は記憶してもらってからがスタート
押し売りMRからの脱却をはかる
感動してもらうことを考えると、必然的に押し売り活動は少なくなると思います。
逆の立場だったらどうでしょうか?
毎日毎日「お願いします!」と言われても、あまり良い印象には残らないですよね?
その面会は瞬時に「忘却」されるので、効果的とは言えません。
無計画にお願いしまくり押し売りで回るよりは、必要なことは、
「こんな情報が欲しいのではないかな、役に立つのではないか」
と考える時間を設けることです。
エリア担当の人は、「1日10件回れ」とかなり厳しい「訪問ノルマ」が課せられますが、
1日3人感動させた方がよっぽど効率的だと思いますよ!
注意!訪問しないでも売れるわけではない
同じ面談内容なら、回数が多いメーカーが勝ちます。
さっきまでの話と矛盾してますよね。
ただそれも当然で、海馬への刺激(情報)×扁桃体への刺激(感動)が多いほど、
顧客の長期記憶には、回数の多い製品の情報が刻み込まれていきます。
ではどうするか?
役に立つ情報というのはみんな知りたいというのは共通なので、
「役に立った」と言われた情報は他施設、医師へも届けてみましょう。
そして競合他社と比べて人数で大きな差がある場合は、
処方のキーマンだけ、重要得意先、病院の重要医師「だけ」訪問しても良いと思います。
エリアの広いあなたは、全員と会っている時間はないのです。
もっとも症例が多く、他者への処方にも影響力のある医師の攻略にのみ注力すべきです。
まとめ
・「感動」してもらうことが処方してもらう早道
・困っていることを解決すると人は感動する。担当顧客が何に困っているかを考えてみよう
・誰もが思いつく困りごとは困っておらず、考え抜いて仮説をぶつけるのが仕事かもしれない
よくミクスのアンケートなどで、第一三共のMRが高評価になっていますよね。
恐らくはこういった「困っていることに回答を持ってくる」活動をしているのではと思います。
タイトルの回答、「何回通えば採用されるか?」の回答は、
「大きく感動させることができれば一回でも良い」となると思います。
もちろん一回でうまくいくことはないので、継続して訪問するのですが、
「こんにちは。よろしくお願いします」では一歩も前進していませんよ!
得意先が何に困っているか、一生懸命考えることから始めてみましょう!
ケースケでした!
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