MRの評価はどのようにして決まるのか?理想のKPIを考える

MRの評価はどのようにして決まるのか?理想のKPIを考える

今日はMRの評価について書いていきます。

製薬会社のMRという職業は、いわゆる営業マンです。

企業は利益追及をすることで、新薬を開発し社会に還元しています。

じゃあ推奨されないような医薬品も無理して紹介しないといけないの…?

という方へ、そもそものMRの評価と、理想のKPIについて考えてみます。

MRから営業される医療従事者の方にも、なんのためにアポイントとって訪問してくるか、

少しイメージしてもらえたら嬉しいです。

 

MRの評価はどう決まっているのか?

「ほとんどの会社は」という前提で読んでみてください。

会社によっては特殊要因で評価されるケースがあるようですが、

概ね類似していると思います。

※KPI(重要業績評価指数)=Key Performance Indicator

KPIとは、組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味し、達成状況を定点観測することで、目標達成に 向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようになります。仮に、目標値からギャップが生まれた場合には、組織行動が当初想定の方向に向かっていない ことを意味し、活動の修正が必要です。

外部リンク:野村総合研究所 KPIとは

計画達成率

いわゆる「ノルマ」ってやつですね。これが一番わかりやすい。

ほとんどの企業、MRはこのノルマを達成するための活動を展開しています。

例えばある薬剤を1000万円売らないといけないとしましょう。

期限までの売上がいくらだったか?で達成率を出して、

それが評価に繋がる営業マンなんです。

もう少し詳しく、このノルマ策定までのざっくりとしたプロセスを紹介します。

ノルマってどう決まるのか?

例として抗がん剤のノルマが決まるまでをご紹介します。

まず自社品が適応を持つ癌腫がありますね。仮に「肺がん」としましょう。

肺がんは組織型別に細かく分類され、一番多いのは「非小細胞肺がん」です。

非小細胞肺がんの中には、EGFRという遺伝子変異がある人が一定割合で存在します。

その治療薬はすでに5剤発売されているので、

競合品がどれぐらい売れているのかというのは概ね施設単位までわかるのです。

今EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんを適応で持つ薬剤は、

イレッサ®︎、タルセバ®︎、ジオトリフ®︎、タグリッソ®︎、ビジンプロ®︎の5剤です。(発売順)

※数字は適当に入力しています。事実とは異なる場合があります。

自社担当品をイレッサ錠®️とすると、エリアトータルの市場は13100(千円)ですので、

シェアが大体11パーセントぐらいですね。

 

今様々な作用機序の薬剤がありますが、

・すでに市場に同種同効薬が存在している場合は、その薬剤の売上が基準となります。

・初めて適応をとった癌腫、新規作用機序の場合、本社が決めた数字が全てです。

多いのは目標シェアをベースに考えるケース。

全社的なイレッサ錠®️のシェアが20%としましょう。

するとこのエリアでは足りていないですね。

20%に近づけるような計画値が降りてくる、というのが通常です。

※実際の診療上では、すでに多くの試験結果からタグリッソ錠に置き換わっているのが現状なので、

あくまでもイメージの話としてとらえていただければ幸いです。

ちょっと現実的では無いのでは?という時

とはいえイレッサ錠のシェアを20%にするには、

大体2倍ぐらいにする必要がありますね(売上上がれば市場も拡大するので)

そこで他のメンバーと協議して、計画値を持ってもらったりするのです。

代わりに他の薬剤の計画値をもらうなどして、

なるべく不公平感出ないようにします。

まぁ、本来やるべき数字を他者に面倒見てもらうのは本来良く無い事なのですが…

余談ですが、この計画会議に入念な準備と「なぜ無理なのか」を熱くプレゼンする人がたまにいます。

その熱意を普段の仕事に向ければ、もっと計画は達成できるのに…とみんなだいたい気づいていますw

そしてベテランMRがそんな熱いプレゼンをするものだから、聞かされる若手MR側は疲弊してしまいます。

 

売上以外の評価は何があるのか?

これは会社によって本当に色々です。

大体あるのが、「行動目標に沿ってどんな活動をしたか?」だと思います。

多くの企業が名前を変えて同じように行動目標指針みたいなものがあるので、

それに沿って活動面を評価されます。

先程まで書いたノルマはどうしようもないケースも存在します。

担当医院が閉院したり、処方数No.1の先生が異動したり…

こうなると計画達成どころではなくなるので、

行動面評価を置いている企業がほとんどですね。

少なくとも話を聞いた大手製薬会社10社ぐらいは、行動面評価がありました。

具体的にどんな部分を見られる?

一例ですが、こんな所が評価点対象です。

・新規講演会の企画立案を行った

・病診連携のネットワーク作りに参画した

・営業所内会議での発言や他者へのアドバイスを積極的に行った

あげればきりが無いですが、「仕事に前向きで営業所内に良い影響を与える存在」

こんな人は行動評価点が高いですね。

他には会社側が行動面を定義している場合。

例えば代表的なものが「訪問数」です。

個人的には悪しき習慣だと思うのですが…

会社が訪問数を決めて、その訪問数に達したかどうかで、働いているかを判断するケース、

営業所長がここを重視した人だと、

「6回訪問する予定が4回しかしてないじゃないか!働いてない!」

とかめちゃくちゃ言い出したりします。

 

先生方、無理な訪問で申し訳ないです…

MRにはあるあるですが、医局前廊下に立ち待ちとかありますよね。

冷静に考えて異様な光景です。

もしこれを先生方が読まれていたら、なぜ立っているのかという回答は、

訪問数が足りてないから、という一面があります。

講演会の案内などはメールでもいいですよね。

でも「訪問しろ!たくさん会え!」っていう評価者がいるんですよ。

もっとも悪しき習慣、かつMRのモチベーションを大きく下げる要因がここにあると思っていて、

特に用事がないのに無理やり会うことを要求されているわけです。

もう無茶苦茶です。頻回に面会して、仲良くなって処方してもらうという仕事は終わりを迎えつつあります。

でも訪問回数に変わるKPIがまだ見いだせていない(主に本社等管理部門側)

そのため、「前期は6回訪問したなら、今期は1.5倍の9回を目指せ!」となるわけです。

ちなみに1.5倍訪問したら、売り上げが1.5倍になるなんてデータはありません。

この辺りかなりアナログに積み上がった訪問計画数が現場に降りてきているのです。

今は一回のインパクトで評価される時代になっていますね。

人間関係で売り上げをあげることができる人はほんの7%です。

これからのMRはチャレンジャーセールスモデルを目指せ!

 

今後の理想のKPIについて

売上でしか評価されない(活動面も売上が上がるような活動が評価される)現状、

多くのMRが処方促進をメインの活動にするのは当然かもしれません。

ただむやみやたらな処方依頼は、得意先から呆れられている一面もありますし、

数字達成のための「詰め」なんか本当に悪しき習慣だと思います。

※「詰め」…通常予想される使用数以上の医薬品を買ってもらうこと。

 

綺麗事かもしれませんけど、医療に貢献するようなKPIが必要かもしれませんね。

ただなんでもできる時代は終わりを迎えていて、

MRが取り組める活動はガイドラインでガチガチに規制されているのが現状です。

「これは役に立てるだろうな」と思っても、それを実行することはできないのが現状なのです。

この辺りおおきなジレンマですね…ガイドラインの改善、緩和を強く望みます。

 

まとめ

・MRは自社医薬品を使ってもらうための営業マンである

・かなり無茶な面会数が要求されているのが現状。

・本社の方、面会すれば売り上げ上がる、という時代でないことに気づいてください…

訪問数の無計画さについてはまた別の記事で書いていこうと思います。

やっぱりMRを疲弊させているのが訪問数と詰めの存在だと思うんですよね。

もう少し評価体系を変えれば働きやすくなるのではと思います。

ケースケでした!