【オンコロジーパイプライン】MSDを徹底分析してみる

今回は絶好調、キイトルーダ®︎を有するMSDのオンコロジーパイプラインについて。
MSDのパイプラインの資料を元に、
今後の将来性を見ていきましょう。
一時期早期退職等も行っていたMSD。
キイトルーダ®︎が絶好調なのになぜ?
今後オンコロジー領域で存在感を示せるか?
この辺りに触れて書いていきたいと思います。
※本記事では、免疫チェックポイント阻害剤を「ICI=Immune Checkpoint Inhibitors」と記載します。
キイトルーダ®︎の現状と今後
オプジーボ®︎に次ぎ市場に参入したキイトルーダ®︎ですが、もう間も無く売上を抜こうとしています。
この理由は、最もICI市場が大きいとされる肺がん領域で有効なデータを構築できたからです。
どんな試験でどんな結果だったか?
という点については次の記事が参考になるのでご覧ください。
Answers ten(外部リンク)【ASCO2018まとめ】キイトルーダ 非小細胞肺がんで圧倒的優位を確立|DRG海外レポート
これは非小細胞肺がん1st line を対象とした試験結果の一覧です。
肺がんのうちの「非小細胞肺がん」の、「1st line」だけでこれだけの試験が報告されています。
(他にも複数の試験がありますが、一部抜粋してもこれだけあります)
なぜここまで各社取り組んでいるか?
肺がん領域が圧倒的な市場だからですね。
厚生労働省:人口動態推計より
肺がんは5年生存率が20%程度と未だ予後不良ながんです。
ただ罹患率が他がんと比べても高いため、
患者数が多く一大マーケットを築いています。
少しまとめると、
・最も市場の大きな肺がん領域で有効なデータを報告している
・オプジーボ®︎と直接比較した試験はないが、「キイトルーダだけが使えるポジション」づくりがうまい。
・高額薬価のため高い売上を稼ぐことができる。
これらの要因から、今後数年、十数年はキイトルーダ®︎がMSDの屋台骨となり、
収益を支えることは間違い無いでしょう。
では今後はどうでしょうか?
「Cancer」と書かれている所に、
色々な種類のがん種が記載されていますが、
これらは全て「キイトルーダ®︎」の適応拡大です。
適応が拡大すれば、当然売上が増えますが、
化合物としては一剤のみ、ということになります。
キイトルーダ®︎以降のオンコロジーパイプラインは乏しい現状です。
自社創薬の道は険しい-他製薬会社との提携-
開発パイプラインにはリムパーザ®︎、セルメチニブ、レンビマ®︎の文字。
これらはアストラゼネカ、エーザイが開発した薬剤であり、MSDの開発品ではありません。
MSDが業務提携を行い、これまたキイトルーダ®︎との併用療法を開発しているのです。
エーザイ株式会社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.
エーザイ創製の抗がん剤「レンビマ®」に関してがん領域における戦略的提携に合意
2社との戦略が合致しこのような提携となっていると思われますが、
MSD由来の抗がん剤はキイトルーダ®︎のみです。
またプレスリリースにも書かれていますが、
相当な金額の支払いを両社に予定しています。
それだけ投資をしても、キイトルーダ®︎にかけているMSDの戦略が見て取れます。
とはいえ圧倒的な存在感を示すキイトルーダ®︎
キイトルーダ®︎一剤だけではなんとなく不安…と思われたかもいるかもしれません。
開発品は複数あった方が良いのはその通りですが、
2024年時点で世界で一番売れる抗がん剤はキイトルーダ®︎という試算があり、
その金額は12billion$over,日本円でおよそ1兆4000億円程度です。
※詳細は次の記事もご覧ください。
もう屋台骨というか、一剤で多くの製薬会社の総売上を超えていますからね。
それだけ圧倒的な存在感を示すことが予想されていますし、
適応次第では世界一を狙える薬剤だと思っています。
まとめ
個人的な意見ですが、僕は複数の抗がん剤を情報提供する方がやりがいを感じます。
またバイオシミラーを開発する企業が多い中次に続く大型製品が予定されていないことは、
かなり大きなリスクがあるのでは無いかと考えます。
PD-1,PD-L1抗体は各社開発競争が激化している領域でもあり、
描いているような市場拡大が行えない可能性もありますしね。
次に続く自社創製品の開発が望まれる所です。
武田薬品のパイプラインに関する記事はこちら
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