MRの実績は運で決まるのか?担当ガチャについて考える

MRの実績は運で決まるのか?担当ガチャについて考える

皆さんは希望の勤務地で働いているでしょうか?

希望通りの人も、希望でない人も、業務命令でその土地で働いていますよね。

今回はこの担当地による「運」について少し考えていこうと思います。

結論ですが、こればかりは「担当地による運、不運は存在する」というのが実感です。

この場合の運というのは、外部環境の変化により実績が決まることと定義します。

つまり「一生懸命やっても実績が上がらないことがあるのでは?」ということです。

これは一部事実です。

とはいえ、本当にやることがないのか?は市場の動きなど見て判断ができます。

少し詳しく書いていこうと思います。

 

担当地による運、不運について。どんなことが起こる?

・TOP処方医が異動した、開業したなどの「人員異動」による環境変化

・圧倒的に有効性の優れる、もしくは副作用の少ない薬剤が発売したなどの「製品特性」による環境変化

・別医療圏に専門病院ができたため患者数減などの「市場変化」による環境変化

もちろんこれら以外にも様々な要因がありますが、

例に挙げた上記3つについては「あなた」がどうすることもできない変化です。

基本MRの情報提供は自社医薬品に関してのみなので、こうした環境変化に柔軟に対応できるものではありません。

では諦めましょう、と言われても数字はのしかかりますよね…さてどうするか?

こうした環境変化に大きく影響を受けやすいのは事実です。

なぜ起きるのか?といえば狭いエリアに複数社が複数名、MRを担当させていることも要因の一つです。

もし前述の通りの環境変化があり、実績があげられないと判断したら、

新しく新規開拓で切り開く等したいところですよね。しかし担当エリアは決まっているのでそれができない。

つまりこの苦しいマーケットでなんとかせねばならないのです。

 

どんな数字の動き方で見分けるか?本当に何もできない?

例えば、あなたはプライマリーケア品目、「マリー錠」を担当していたとします。

市場でも一定の評価を得ているマリー錠は、1stチョイスで使われることも多く、

患者数増に合わせて売り上げも伸びていきました。

競合品は「プライケア錠」です。2ndチョイスで使用されています。

するとこんな感じのグラフになりますね。

 

1.市場増に伴い理想的に売上が上がっているケース

実際はこんな綺麗なグラフになることはほぼないですが、イメージを捉えてください。

このほぼ横ばいのグラフをベースに、いかにして上向きに上げていくかを考えるのが仕事です。

 

まずヘビーユーザーの先生が異動してしまったとしましょう。

後任には非専門医が着任、ここで予想されることは「じわじわ市場は減っていく」ということです。

グラフには下向きの力が働きます。

 

2.医師が異動、市場全体が縮小し始めたケース

 

この場合当然ながら2剤とも売上が下がります。

市場の縮小がそのまま反映されているわけです。

これは外部環境の変化ですね。あなたがどう頑張っても変えることのできない部分です。

そして黄色矢印の大きさは同じです。なぜなら等しく影響を受けると考えられるからです。

ではこんなグラフになったらどうでしょうか?

 

3.競合品の売上は横ばいながらも相対的にシェアを上げつつあるケース

読み取れることは、相対的にプライケア錠がシェアを伸ばしているということです。

この場合、「外部環境変化」だけでは説明できませんね。

あなたの仕事はこのグラフの動きがなぜ起きているかを調べることです。

「ヘビーユーザー医師が異動してしまって…」という言い訳ができなくなってしまいました。

 

では次に、競合に革新的な医薬品が発売した場合。

適当に「バスター錠」とかにしておきます。

 

4.圧倒的存在感の薬剤がマーケットに参入してきたケース

 

この場合苦しい戦いは目に見えてますね。

恐らくはかなり数字の追求は厳しくなるものと思われますが、

計画を立案する本社側もそこまで無慈悲ではない…と思いますので、ある程度予測は立てていると思います。

これも外部環境の変化の一つでしょう。あなたの力で発売を止めることはできません。

こういったケースの場合、全社平均を一つの指標として設定します。

 

5.全社平均より上か下か?競合品との差も見ていく

 

様々な要因があるのはもちろんですが、全社平均と比較してシェアの奪われ方が早いですね。

この場合あなたにできる仕事はまだあるはずです。

ある程度の減少は見込むとしても、その角度を全社平均に近づけるような活動が必要です。

 

余談

ただこのような革新的新薬が登場し、全てにおいて自社品を上回るような製品が出た場合は、

いっそ切り捨てるくらいの決断が欲しいところです(実際そんなこと無理だとは思いますが)

少し狭いニッチな部分で、自社品が優っており、

メリットの得られる症例群「だけ」を訴求すると良いと思います。

他責要因は多いが、何もしなければ沈んでいくだけ

ケース1のグラフをベースに考えると、

あなたも競合会社も、必死で自社品の売上を上向きにしようとしていますよね。

ただこのケースの場合、もし競合会社の活動が評価された場合、

上向きに及ぼすパワーは相対的にプライケア錠に軍配が上がります。

これは担当ガチャの影響を受けていないですね。明確に活動の差が実績となって現れています。

外部環境の変化で致し方ない実績推移もありますが、

紹介してきたケースのうち、ケース3とケース5に関してはMRの影響力もあると考えられます。

 

ケース3の場合

この場合下向きの黄色矢印の大きさは同じはずですが(医師異動に伴う外部環境変化)、

上向きの青色矢印(MR活動)の大きさが異なるため、両者のシェアが近づいています。

これは相対的にシェアが縮まっているケース。

「医師が異動してしまい…」では説明がつきません。

この場合競合との活動の差が実績に反映されていると考えられます。

 

ケース5の場合

全社平均より、自分の担当市場でシェア負けしていますね。

例えばですが、「自社品が腎機能低下例にも使いやすい」という特徴があったとしましょう。

圧倒的ブロックバスター候補のバスター錠は腎機能低下症例に使いにくい性質を持っています。

全社的に「腎機能症例にはマリー錠が使いやすい!」とプロモーションを行ったが、

果たしてこのグラフを見ると、そのメッセージは自分の面会している医師に伝わっていたでしょうか?

不十分であった可能性はないでしょうか?こんな状況でもやれることはありそうですね。

ましてやプライケア錠とのシェアも近づいてきています。

競合会社との活動がどう評価されているか?を分析し直す良いタイミングです。

自分が及ぼす影響力は少ない、ただ競合に負けなければよい

色々ケース別に書いてきましたが、

「外部環境の変化で影響を多大に受けるものの、僕たちは競合会社に負けなければ良い」のです。

例えばこんなグラフを描ければ、活動面は評価されていると言えます。

例え実績が下がっているとしても、

・全社平均を上回り

・プライケア錠との差をさらに広げ

・バスター錠の市場浸透を食い止めている(平均と比較して)

これらのことは会議でも堂々と発言できるはずです。

と言いますか…恐らくは他の人の方が散々な結果になっているものと思われます。

 

「MRが影響を及ぼせることなんてそんなに多くない」

という意見はその通りですが、これは競合会社にも当てはまるわけで、

我々が意識すべきは「どうしようもない外部環境の変化」に嘆くのではなく、

「競合会社よりもいかに優れた提案ができるか?」を考えるべきなのです。

 

まとめ

・MRの実績は外部環境の変化に大きく影響される

・市場の変化から「自分の影響力の範囲でできること」を考える

・結局は競合会社に負けないような提案が必要

確かに担当持った直後から右肩下がりを続けて…というケースもあるかもしれません。

競合品と合わせて市場を分析し、自分ができることをコツコツやるしかないのです。

自身の実績低迷の理由を外部環境のみで分析するのは危険ですし、

会議でそんな理由を発表されても、見ていてこちらが辛くなっていきます。(ケース3の場合など)

営業は競争の側面が強いため、「まず競合会社には負けない」という意識が必要だと思います。