【オンコロジーパイプライン】小野薬品を徹底分析してみる

本庶佑先生のノーベル賞受賞で、再び脚光を浴びているオプジーボ®︎。
そんなオプジーボ®︎を含む小野薬品のパイプラインを分析します。
小野はオプジーボ®︎の一発屋で終わってしまうのか?
ブログ更新しました。今回な小野薬品のオンコロジー領域のパイプラインについて。BMSと提携したことでcompoundはありますね。このうち何剤が発売するかはわかりませんが、かなり豊富なラインアップになっています。https://t.co/BBapM8EOho
— ケースケ (@Keisukemrlifeh1) October 16, 2018
結論から言いますとそんなことないパイプラインです。
・現在開発進行しているパイプライン
・BMSとの提携によるシナジー効果
この辺り踏まえて書いていこうと思います。
オプジーボ®︎(ニボルマブ)
国内承認日:2014年7月4日
国内におけるピークセールス
予測年度:2年度
予測本剤投与患者数 : 470人
予測販売金額 :31億円(ピーク時)
グローバル予想:11.3billion $(およそ1兆2,500億円)
中医協発表の資料は承認時のものなので、
適応がメラノーマのみでピーク時金額がとても低いです。
2024年時点での売り上げ予測は、
抗がん剤の中で世界3位、およそ1兆2,500億円が予想されています。
詳しくは次の記事も参照ください。
代表的な臨床試験
※正直多すぎるため、代表的な試験は以下の記事を参照ください。
よくまとまっていてわかりやすいです。
なお今後予定しているがん種は以下の通りです。
主戦場の肺がんから、泌尿器、消化器と進出していっています。
やはり1st in classの薬剤の強みとして、
市場を切り開く使命を十分果たしていると思います。
(他ICIは試験がうまくいっていないものも多い)
MSD社のキイトルーダ®︎が肺がん領域のデータは他社を圧倒しているため、
将来的には売上が逆転すると予想されていますが、それでも十分な売上です。
BMSと販売提携していますが、アジア以外のロイヤリティ収入は4%とされており、
実に勿体無い現状が現れています…
ただ自販する体力がなかったため難しいのでしょう。
ちなみに同機序のPD-1抗体のキイトルーダ®︎からは継続して特許使用料も受け取っているようです。
小野薬品は完全にオプジーボ®︎一剤で大逆転を果たしました。
ヤーボイ®︎(イピリムマブ)
国内承認日:2015年7月3日
国内におけるピークセールス
予測年度:初年度
予測本剤投与患者数 : 220人
予測販売金額 :12億円(ピーク時)
グローバル予想:1.54billion $(およそ1600億円)
代表的な臨床試験
先ほどの記事が再び参考になります。申し訳ありません…
基本オプジーボ®︎との併用で開発が進んでいます。
現在予定しているがん種は以下の通りです。
皆さまご存知の通り、オプジーボ®︎は小野薬品が開発しましたが、
ヤーボイ®︎はBMS、早速シナジー効果が表れている例ですね。
ヤーボイ®︎海外承認時は予測売上が1 biilion越えでしたが、その後の
適応拡大試験の結果等受けて変動する可能性はあります。
ちなみに昨年最終四半期の売上高は2.69億ドルと報告されていますね。
エンコラフェニブ、ビニメチニブ(本邦未承認)
※国内未承認のため中医協承認時データなし
グローバル予想ピークセールス
エンコラフェニブ:57milllon $
ビニメチニブ: 123million $
代表的な臨床試験
COLUMBUS試験
PFSの中央値は、ビニメチニブ+エンコラフェニブ併用投与群で14.9カ月 vs ベムラフェニブ単剤投与群で7.3カ月(ハザード比 0.54, 95% CI: 0.41~0.71, p<0.0001)。中央判定によって評価した全奏効率は、それぞれ63% vs 40%であった。奏効期間中央値は、それぞれ16.6カ月 vs 12.3カ月。
推奨用量は、ビニメチニブ45 mgを1日2回経口投与およびエンコラフェニブ450 mgを1日1回経口投与。
元々の創薬は海外ARRAY Biopharm社です。
2018年7月時点で、FDAが併用療法で承認しています。
エンコラフェニブがBRAF阻害、ビニメチニブがMEK阻害ですね。
同機序にノバルティスのタフィンラー®︎、メキニスト®︎があります。
一足先に国内でも承認されています。
もちろん直接比較の臨床試験は行われていないので、
完全に企業同士の戦いになると思われます。
1st in class の優位性を発揮したいノバルティスと、
すでにオプジーボ®︎でメラノーマの領域に参入していた小野薬品が、
どのように戦略を繰り広げるのか見ものです。
ただ市場としてはそこまで大きいものではないので、
やはり他がん種への適応追加がカギなのかもしれません。
例えば肺がんでもBRAF遺伝子変異が確認されていますし、
小野薬品は大腸がんへの適応拡大を予定しています。
その他のパイプライン
BMS-986205
IDO阻害剤です。
類似機序のepacadostatの試験中止に伴い動向が注目されていましたが、
開発元のBMS社が試験中止の発表をしています。
外部リンク:IDO阻害剤epacadostatの併用試験失敗の波紋。
ブリストル・マイヤーズスクイブ社、同社のIDO阻害剤BMS-986205のピボタル試験中止を発表
ただ2018年のASCOで、
オプジーボ®︎併用で膀胱癌に有効性が示されたとあります。
一部の臨床試験は進行中なのでしょうか…
IDO阻害剤はPD1.PD-L1との併用で効果を発揮されると期待されている薬剤だけに、
研究は継続しているのかもしれません。
外部リンク:ASO2018膀胱癌報告
http://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2018.36.15_suppl.4512
他開発中の一覧の中には、
抗TIGIT抗体、抗LAG3抗体等々新規免疫チェックポイント阻害剤や、
経口のBTK(Bruton tyrosine kinase)など、かなり幅広く手掛けているといった印象です。
元々自社創薬のオプジーボ®をベースに、BMSの海外の販売網と開発力を合わせて、
がん免疫療法の分野で存在感を発揮する「オンコロジーメーカー」を目指していくのだろうと思います。
もちろんPI,PIIはどのような結果が出るかはわかりませんので、
当面はオプジーボ®で頑張っていくというところでしょう。
まとめ
MSDのパイプラインと比較をすると、キイトルーダ®一剤に依存しているMSDに対して、
かなり幅広く手がけている印象を受けます。
オプジーボ®併用での臨床試験が多く組まれているため、
海外で販売時ロイヤリティ収入も得ることができそうです。
ただ…4%のロイヤリティなので、ここはもう少し強気な交渉でも
よかったのではないかなと感じてしまいますが。
1st in classの薬剤もあるようなので、今後は完全にオンコロジーメーカーとして
歩んでいくことが予想されます。オンコロジー領域の開発は外資系の力が圧倒的でしたが、
日本国内の会社から世界に発信できることは素晴らしいことだと思います。
以前ご紹介したXPO阻害剤、Selinexor(セリネキサー)も小野薬品が手掛けることがわかっています。
以下、個人的な感想ですが、
・パイプラインとしては非常に有望なものが多い
・キイトルーダ®に先行された肺がん領域をカバーするのに十分な他がん種への適応追加
・現在の体制を拡大し、MR募集が今後も継続してかかると予想
といったところでしょうか。
また他の会社も分析してみようと思います。
ケースケでした!
-
前の記事
【オンコロジーパイプライン】MSDを徹底分析してみる 2018.10.14
-
次の記事
【20代の駆け出しMR】仕事のやりがいを感じられない人へ 2018.10.18
コメントを書く