訪問回数トレースはやめたら良いのでは、という意見

訪問回数トレースはやめたら良いのでは、という意見

MRの行動指標の一つに、「訪問回数」ってよくありますよね。

一ヶ月の間に何回面会するか?という指標です。

MRは営業マンなので、必然的に面会して宣伝するのが仕事なわけなのですが、

果たして現実的ではない面回数の設定に、どんな意味があるのでしょうか?

なぜ頻回に訪問するのか?

前にも少し触れましたが、面回数と売り上げが相関するというデータは過去存在していたそうです。

いわゆるShare Of Voice(SOV)と呼ばれる考え方で、

とにかく頻回訪問!処方依頼!の時代があったと。

ケースケがこの業界で働き始めた時には、このSOVにブレーキがかかりつつありました。

Share Of Mind(SOM)という考え方が出てきた時代です。10年近く前でしょうか。

「一回の面会で、医師のマインド(記憶)に残るようなインパクトのある面会を重視する」

といったこの考え方は、量より質に転換する良い考え方なのではないか、と思っていますが、

会社によっては変わらず訪問回数を厳しくトレースされるケースがあるようですね。

 

過去所属した会社ではどうだったか?

新卒で入社した会社は、まさにSOVからSOMへの方針転換が進んでいた会社でした。

そのため現実的ではない訪問回数設定などは、上司から注意をされていた記憶があります。

(とはいえ未訪問〜ポテンシャル高施設への訪問頻度などは管理されていた)

その後オンコロジー領域に異動し、そこからはデタラメな訪問回数を要求されることはなくなりました。

 

転職して2社目の会社、僕は変わらずオンコロジー領域の担当で、特に影響がなかったのですが、

プライマリーケア事業部のMRの人は、かなり無理な訪問回数を設定されていたように思います。

週3回会うように訪問回数を設定されていた当時の同僚は、かなり疲弊していました。

「会っても話すことがない…」と。そりゃそうですよね。

 

訪問目的のない訪問は無意味である

MRの仕事は営業なので、当然売上をあげることが使命となります。

売上を上げるにはどうすれば良いか?製品を紹介して使ってもらうことです。

製品を紹介するにはどうするか?時間を作って面会してもらうこと、ですよね。

この「時間を作って面会してもらうこと」という行為そのものを、

目標としてしまっている企業が多く、MRは疲弊しています。

 

「自社製品をどうPRするか?他製品とどの点が差別化できるのか?」

という使ってもらうための考えをまとめる時間より、

「どの時間だったら会えるか?どの順番で回ったら効率良いか?」

というように、会うことをゴールとして設定してしまっているのが現状です。

で、実際会った時には「先生こんにちは、最近弊社の〇〇錠どうですか…」となりがちなのです。

アポ前の準備も十分でない状態で訪問するので、訪問目的が明確でない訪問が行われてしまうのです。

訪問回数を設定している部署にぜひ言いたい

結論、「そんなに会えるわけないでしょ」と言いたいです。

働き方改革と程遠い、極めて多忙な医師という職業に対し、

「一ヶ月の間にA医師には10回面会してください〜」とか平気で言ってくる管理部門の方々。

全く現場感覚がわかっていない。

顧客である医師側も、月10回会ってほしいなんて絶対思っていない。

現場のMRも、これだけ忙しい医師が10回会ってくれるなんて絶対思っていない。

このLose-Loseの関係を、管理部門は要求しているのでしょうか。

 

「面回数の多いメーカーの製品をよく使っている!データもある!」

という管理部門側からの反論も出てきそうですね。

実際KPIを決めている管理部門は、本当に色々なデータを持っていて、

競合他社と比較した時の面回数や、製品の情報浸透具合など、様々なデータを調査会社から買っているんですね。

これは医師にアンケート等で調査をするので、

「先月はA社から〇〇錠の話を聞いたな、アンケートに書いておこう」という具合でデータが積み上がります。

まずこのアンケートを書く際、医師が思い出すMRの面会内容で、

「先生最近弊社の薬剤使ってますか…どうですか…」なんて面会は選ばれないのです。

前述の通り、訪問目的を明確にできない状態の面会では、10回会っても、100回会っても認知はされていません。

 

KPIから「訪問回数」を削除してみてはどうか

デタラメに会ってもなんのインパクトも残せないのであれば、いっそのこと削除したらいいと思います。

訪問することが目的となっているので、AM11時以降には会社にいるな、という指示が流れこともありました。

(僕は領域が違うので影響受けませんでしたが、プライマリーケアの皆さんのルールとなっていたようです)

「何か新しいことを提案できないかな」と思い、オフィスで文献引っ張って勉強していたら、

「そんなPCに向かっている時間があるなら早く訪問しろ!」と言われるのです。

そして特に訪問目的のないまま会社を出る。新しいことを提案したいという意欲も無下にされるのです。

モチベーションが上がるわけありません。

もちろん訪問回数をゼロにするわけにはいきませんが、

少なくとも一人に10回会うなんて馬鹿げた指標を、現場に強いるのは辞めていただきたいと思います。

月一回のインパクトのある面会ではどうか

皆さんのターゲット医師の人数は何人ぐらいでしょうか。

100人-200人ぐらいに落ち着くのではないかな、と思います。

このうち市場構成のABC分析をして、80%の市場、

かつ施設内で処方影響力を加味し、真のメインターゲットは何人ぐらいになるでしょうか。

僕は20人もいない、と個人的には思っています。

前職オンコロジー領域で見ても、20人もいれば十分な人数です。

(参考になりませんが、今のオーファンの領域は、5人抑えれば自分の市場の80%カバーできます)

仮に20日稼働日があるとして、1日2人にアポ面会(午前、午後)

40人ぐらいにリーチできる、そんな計算です。

自分の中の重要度の高い20人に、月2回も面会できる計算です。十分ではないですか?

その20人が自社品をメイン処方にしてくれたら、計画は楽々達成ではないでしょうか?

これぐらい訪問回数はゆるい指標であっても良いと思うのです。

 

【新人MRマニュアル】認定試験後から始める来年の準備-ABC分析-

まとめ

・訪問目的のない面会は意味がない

・非現実的な訪問回数の設定は、「会うこと」を目的として宣伝に至らないケースがある

・管理部門の皆様、Lose-Loseのこの指標を辞めてみてはいかがでしょうか

若干愚痴っぽくなってしまいましたが、

いまだにこの指標で疲弊している方などをTwitterで見かけると、

辛そうだなぁ…と思ったので記事にしてみました。

自分自身は言われる環境にないのですが、

早くこの指標がなくなっていってほしいなぁと思います。