5/30追記【オンコロジーパイプライン】第一三共を徹底分析してみる

5/30追記【オンコロジーパイプライン】第一三共を徹底分析してみる

※2020年ASCOの結果を受けて、関連ツイート等追記しました。目次から追記部分まで飛べます。

医師からのMR活動が評価されている第一三共。

今後の事業戦略はどうでしょうか?

オンコロジーへの力の入れ具合は?

今回は第一三共について調べてみました。

「第一三共にオンコロジーってあったっけ?」と思われた方。

鋭いですね。現在の第一三共の主要製品に抗がん剤はありません。

ただ検索をかけると、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業を目指す」とありますね。

パイプラインを少し見ていきましょう。

第一三共:開発パイプライン一覧(外部リンク)

結論:DS-8201にすべてをかける第一三共【追記】

「すべてをかける」は言い過ぎかもしれませんが、

圧倒的に力の入れ具合が他薬剤と違います。

この薬剤はADCと呼ばれる抗体薬物複合体です。

 

ADC: Antibody Drug Conjugateとは?

ADC: Antibody Drug Conjugateの頭文字よりADCと呼ばれていますが、

抗原抗体反応と、細胞障害性抗がん剤をうまく応用した、

次世代のDDS(Drug Delivery System) とされています。

やはり力を入れているだけあって、第一三共の作成している資料がわかりやすいです。

リンク張っておきます。

 

2017年3月29日発表 第一三共社ホームページより

抗体医薬・抗体薬物複合体(ADC)

 

 

DS8201の特徴

作用機序は中外製薬のカドサイラ®と同様と思われます。

抗HER2抗体+抗がん剤のADCで、HER2が関連するがんには広く臨床試験を行っているようですね。

 

現在のパイプラインからは乳がん、胃がん、大腸がん、肺がん(NSCLC)とあります。

もしすべて適応が通れば恐ろしいカバー率ですね。

DSが診療科毎に担当分けないなら、仕事は忙しくなりそうだなぁとか思ってしまいますが。

ただあくまでもHER2が関連しているがん種だけだと思われるので、

例えば肺がんなんかは患者数が少ないですね。

一方で治療薬が十分ではない分野なので、独占できる可能性は十分にあります。

また各社と開発提携しているのも大きな特徴です。

例えばPD-1,PD-L1抗体との併用が予定されています。

すでにがん種によってはがん免疫療法がメインの治療法になってきていますが、

キードラッグに併用させることで治療機会を逃さない戦略が見て取れます。

 

一方で競合になると思われるカドサイラ®ですが、積極的に適応拡大の予定はなさそうです。

中外製薬パイプライン

現在のところは乳がんのアジュバントのみ公表されている情報です。

現在の適応も再発乳がんなので、HER2陽性の乳がんは完全に抑えたいのでしょう。

(会社の方針としては明らかにテセントリク®に力を入れている様子がうかがえます)

【追記】2020年ASCOにて、DS-8201の有望な結果が報告

DESTINY-Lung1試験

https://twitter.com/Keisukemrlifeh1/status/1266373395555336192

DESTINY-Lung1試験の有害事象

DESTINY-Gastric1試験は発表後NEJM掲載

DESTINY-CRC1試験

ASCO2020において、適応追加を予定していたがん種に対する試験結果が発表されました。

これらの結果を見ると、HER2が関連したほとんどのがん種において有望な結果が報告されているため、

適応は広がっていくものと予想されます。

現時点ではPhaseIIIの結果ではないためまだ確実というわけではありませんが、

かなり期待のされている薬剤であることは間違いないでしょう。

元々の乳がんに加えて、肺がん、胃がん、大腸がんと着実に結果を出しています。

第一三共社のカンファレンスコール資料から読み取れること

現在公表されている細かなデータは、第一三共のカンファレンスコール説明資料を参照ください。

ちなみに54ページ中DS-8201に割いているページ数はおよそ15ページです。

もう製品説明のプレゼンテーションのようですね。

余談ですがこのカンファレンスコールの資料の大半は抗がん剤の開発状況。

もう本当に抗がん剤だけを開発していますと言わんばかりです。

オンコロジー領域への積極的な投資が見えて来ます。

 

CAR-Tにも参入。圧倒的にがん領域のプレゼンスを高める

今話題のCAR-Tにも参入を表明しています。

 

パイプラインの項目にもイエスカルタが書かれています。

近年注目を集めているCAR-T療法ですが、ついに国内資本の会社が本格的開発に踏み切りました。

ギリアドとの契約どうなる?

Kite社との包括提携は2017年1月10日付です。(上記プレスリリース参照)

ギリアドがKite社を買収したのが2017年8月28日付です。

両社併売などはあり得るのか?少し知らべて見ましたが、

さすがに結論に触れられている記事などは見受けられませんでした。

IRの記事にも、第一三共側にきちんとイエスカルタが記載されているので、

日本は第一三共がやっていくという事でいいのでしょう。

ギリアドサイエンシズ社プレスリリース

ギリアドサイエンシズ カイトファーマを119億ドルで買収

※2017年8月28日付

 

ギリアドの日本法人のホームページにもCAR-Tはパイプラインに含まれていません。

ギリアドサイエンシズ パイプライン

 

ただ若干気になるのはHIV治療薬のケースで、JTから販売権を取り返すべく、

提携解消に向けた協議が始まっているところです。

(こちらもまだ結論が出ていないようです)

ギリアド社がオンコロジー立ち上げのタイミングで、

自販のため何らかの交渉をするかもしれませんね。

そのほかオンコロジー領域パイプライン等

ご覧いただく通り「オンコロジー」と「その他」みたいな書き方ですよね。

もはや第一三共は抗がん剤メーカーとして数年前から舵を切り、開発し、

そしてもう間もなく実現しようとしています。

開発パイプラインで気になるものとしては、キザルチニブでしょうか。

 

キザルチニブはFLT3阻害剤で、もともとはアステラス製薬の開発品目です。

アステラス製薬は2018年9月、同機序のギルテリチニブ、ゾスパタ®錠の承認を取得しました。

直接比較のデータなどは見受けられなかったのですが、当然ながらギルテリチニブの方が

薬剤プロファイルに優れるため、導出したと考えるのが一般的です。

なおこれらに関する記事はAnswers Newsに詳しく書かれているので、こちらも参照ください。

事業部立ち上げを行うのか?

エージェントに情報確認してもらったところ話がないそうです。

事業部を立ち上げて外部から人を集めるのか?

立ち上げるものの社内のMRを異動させることで人員確保を行うのか?

それとも事業部を分けず、「現在のMRがすべての製品を担当する」方式にするのか?

いずれにしても業界的に注目の会社で、オンコロジーに携わっている関係者は情報を集め

ておいて損はないのでしょうか。

情報を集めるには転職エージェントを活用ください。会社名指定で情報を集めてもらえます。

転職サイトの【BIZREACH(ビズリーチ)】

リクルートエージェント

エージェントに関する記事はこちらも参照ください。

【MRの転職】最適なエージェントを選び情報戦を制する

 

まとめ

DS-8201がどれぐらいの市場インパクトがあるかは不明です。

競合品のT-DM1(カドサイラ®)の売り上げは年間80億円、

16年から17年にかけては微減しています。

恐らくは市場環境に変化があり、適応を複数広げないとブロックバスターになるとは言い難いでしょう。

ただ後に続く開発品がほぼオンコロジー領域という事を考えると、

オンコロジービジネスとしては、国内においては大きな存在感を発揮しそうですね。

ますます注目の企業です。

他、いままでまとめてみた記事です。ご興味あればどうぞ!

武田薬品パイプライン

MSDパイプライン

小野薬品パイプライン