【オンコロジーパイプライン】アッヴィを徹底分析してみる
各領域で勢いのあるアッヴィがオンコロジーにも進出してきました。
そんなアッヴィが有するパイプラインから、
今後の将来性について少し分析してみます。
オンコロジー製品第一号となった、ベネトクラクス®︎についてもみていきましょう。
アッヴィオンコロジー気になる。とはいえ転職したばかりだし、今の会社に不満もなく、でも血液がんやりたいな…という気持ちもある。調べてみました。https://t.co/FhP0PhHPu6
— ケースケ (@Keisukemrlifeh1) October 8, 2019
業界でのアッヴィの立ち位置について
アッヴィは2013年にアボットラボラトリーズから分社化した会社です。
エスタブリッシュト製品(いわゆる長期収載品)をアボットが、
研究開発型医薬品(いわゆる新薬)をアッヴィが担う形で分社化しました。
なお現在はこの2社の間で資本関係、およびグループ会社としての関係は存在していないことになっています。
アッヴィの国内におけるプレゼンスは?
アッヴィの日本国内における売上高は、販売会社レベルで16位、販促会社レベルで17位となっています。
前年比をみるとものすごいアップ率であることがわかるかと思いますが、
この要因はC型肝炎治療薬のマヴィレット®︎によるところが大きいです。
ハーボニー®︎に続き上市されたマヴィレット®︎ですが、
その投与期間の短さ、ジェノタイプを選ばない点が評価され、
2018年国内の医薬品ランキングで売り上げ1位となった製品です。(1177億円)
アッヴィの世界でのプレゼンスは?
世界全体で見ると8位にランキングしています。
特筆すべきはその研究開発費でしょう。ロシュに次いで世界2位の投資額です。
C型肝炎治療薬のマヴィレット®︎が好調ですが、
この市場は長く続くものではないので、利益を次なる新薬への投資に回しているのでしょう。
数年前ハーボニー®︎バブルがあったギリアドも、2017年にカイトファーマを買収し、
CAR-T療法を含むオンコロジーパイプラインを手に入れています。
(国内では第一三共が開発を進めているようです)
アッヴィのパイプライン一覧(2019年9月現在)
グローバルで売上高TOPのヒュミラ®︎を追うように、
自己免疫疾患領域の開発品が豊富です。
適応も広く抑えていることと、既存薬を上回る有効性、
投与の利便性等からかなり市場に浸透するであろうパイプライン構成だと思います。
一方でオンコロジーのパイプラインについては、
第三相試験に名前のあるRovalpituzumab Tesirine(Rova-T)の開発中止など、決して順調な話題ばかりではありません。
しかしこの薬剤の試験結果がうまくいっていれば、初のDLL3阻害剤として承認されていたでしょう。
P1/P2は世にでる可能性が低いのでまだ不明確なものの、
ファーストインクラスでの新たな作用機序をターゲットとした創薬が行われていますので、
オンコロジー領域においても、かなり革新的な薬剤を開発していることは間違いありません。
(臨床試験結果等詳細は次段落以降で記載しています)
話題の新薬、ベネトクラクス®︎ってどんな薬なのか?
ベネトクラクスはBCL-2を標的とする世界初の経口BCL-2阻害薬です。
がん細胞で失われてしまったアポトーシスというがん細胞の自然死や自然破壊の過程を回復させる作用があります。
BCL-2はfamilyタイプが存在し、各社開発ターゲットとして創薬、臨床試験を進めているところです。
承認時、世界的なピークセールスの見積もりはおよそ1.7 billionと言われています。(Fierce Biotechより)
ただ今後の臨床試験の結果から、適応が広がることで売り上げも拡大していくでしょう。
再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)
正常の細胞がダメージや傷を受けた場合、そのまま放置されてしまうと異常細胞になってしまったり、がん細胞になってしまったりします。
そのため、細胞には「アポトーシス」と呼ばれる自然細胞死の機能が備わっており、異常な細胞はアポトーシスによって自然に消滅していきます。
しかし慢性リンパ性白血病細胞はBCL-2と呼ばれる抗アポトーシスタンパク質を過剰に発現してることが知られています。
BCL-2は通常、細胞内のミトコンドリアに存在していますが、がん細胞や白血病細胞が過剰に発現するとアポトーシスが抑制され、死ななくなってしまいます。
CLLで承認を取得しました。MURANO試験の結果は下記の通りです。
(余談ですが引用させていただいている新薬情報オンラインは非常に参考になる情報が多い上に、
その情報の早さに驚きます。いつも勉強させてもらってるサイトの一つです。)
トレアキシン+リツキサン群と比較してPFS未到達、有意差ありHR=0.17とかなり有望な結果ですが、
悩ましい事に、開発中に買収したファーマサイリクス社のイムブルビカ(イブルチニブ®︎)が
同適応を有しているため、グローバルで見ればカニバリズムが起きるのではないかなと思います。
事実イブルチニブ®︎の世界的売り上げ予測は8千億円を超えるとも予想されており、
同社の屋台骨製品になることは間違いありません。
(日本での開発、販売等はヤンセンファーマ社が行なっているようです)
症例数もそこまで多い疾患ではないため、今後の適応拡大に期待なのではないでしょうか。
…と思ったら2剤を併用して試験を行なっていたようですね。
CLARITY試験の結果よりPeter Hillmen氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するBTK阻害薬イムブルビカ+BCL2阻害薬ベネトクラクス併用療法は、末梢血評価による微小残存病変(MRD)陰性率53%を達成しました。
MRD53%とかなり高い有効性が報告されています。
CLLの治療は大きく変わりそうですね。新機序の薬剤を2剤組み合わせる新しい試みです。
この他にもガザイバ®︎併用でも試験を行なっています。
追跡期間中央値28ヶ月時点における主要評価項目である24ヶ月無増悪生存率(PFS)はベネトクラクス+ガザイバ併用群88%に対してクロラムブシル+ガザイバ併用群64%、ベネトクラクス+ガザイバ併用群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを65%(HR:0.35,95%信頼区間:0.23-0.53,P<0.0001)有意に改善した。なお、細胞遺伝学的高リスク患者(IGHV未変異、TP53変異)に対してもベネトクラクス+ガザイバ併用群の有用性が確認された。
CLLのベース治療薬として普及していくのではないでしょうか。
多発性骨髄腫(MM)
セルジーンの活躍により戦国時代となっている多発性骨髄腫ですが、
再発難治性症例において、このベネトクラクス®︎も試験を行なっています。
フォローアップ期間中央値18.7ヶ月時点における主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はベネトクラクス群22.4ヶ月に対してプラセボ群11.5ヶ月、ベネトクラクス群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを37%減少した(ハザード比:0.630,95%信頼区間:0.443-0.897)。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値は両群間で未到達であった(ハザード比:2.027,95%信頼区間:1.042-3.945)。また、全患者群における客観的奏効率(ORR)はベネトクラクス群82%に対してプラセボ群68%(p<0.01)、完全奏効率(CR)以上はベネトクラクス群26%に対してプラセボ群5%、最良部分奏効率(VGPR)以上はベネトクラクス群59%に対してプラセボ群36%を示した。
前治療歴中央値で2レジメン、そのレジメンにプロテアソーム阻害剤を含んでこの成績です。
(ボルテゾミブはプロテアソーム阻害剤で同機序の薬剤を使用したレジメンとなります)
骨髄腫は比較的薬剤による効果が得られやすいとされており、
そのためなのか新機序の薬剤がどんどん登場し、10年生存率が狙える疾患となりました。
今回のベネトクラクスが新たな治療法としてさらに注目されそうですね。
よりフロントラインで使われ始めれば、さらに市場獲得が狙えるだろうと思います。
アッヴィへの転職は魅力的なのか?
個人的意見ですが、チャレンジしてみたい会社です。
僕は転職したばかりということもあり飛びつくことはできないのですが、
今後新薬発売のタイミングで追加募集がかかるようなことがあれば、
話は聞いてみたいと思う会社です。理由は3つ。
・オンコロジー領域の薬剤がファーストインクラスを狙ったものが多い
・扱うベネトクラクス®︎が市場で一定の評価を受けるだろう薬剤であること
・会社そのものができたばかりで文化が未成熟
個人的デメリット部分は以下の3点です。
・意外と社員数が多い。1200人程度はいる模様。
・マヴィレットの売り上げ減は予測されている
・オンコロジー 領域PIIIの薬剤が2成分である
文化が未成熟な企業は好きなのですが、社員数はもう少しコンパクトな企業なら良かったなぁという欲張りな意見と、
マヴィレット®︎はその役目から長期にわたり収益に貢献する薬剤ではないですね。患者が治癒するので。
がん領域は臨床試験が難しくなっていますが、Rova-Tが失敗し、PIIIにあと1成分でもあれば、
より魅力的なパイプラインになったかなと感じます。
ただ何れにしても適応拡大等も行うでしょうし(ベネトクラクス)、忙しいことは間違いないでしょう。
社内異動だけで集めるというウワサ?
これは大いにあるでしょうね。スキリージ®︎立ち上げの際も社内異動を多く募ったそうです。
ただスキリージ®︎部隊に転職した知人がいるので、
外部からの採用も十分ありえると思います。
とにかくエージェント等から情報を取ることをお勧めします。
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まとめ
・業界でも注目のアッヴィがオンコロジー 領域に参入
・血液がん領域で存在感を示し、次の薬剤に繋げることができるか?
転職は情報戦なところもあるので、
ぜひ信頼できるエージェントとやりとりをして、情報を集めてみてください。
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