【書評:外資の流儀より】外資はドライで残酷なのか?

【書評:外資の流儀より】外資はドライで残酷なのか?

この本を手にとって、パラパラめくってみて感じた感想は、

「日本企業には、僕の知らない文化があるのかもしれない…」でした。

書かれていることは「まぁ当たり前だよなぁ」と思えることが多かったからです。

僕はいわゆる外資系という会社で働いて3社目です。

外資の当たり前、内資系との違いについて少し書いてみます。

 

この本の簡単な紹介をしておくと、

著者の中澤一雄さんは日本マクドナルドに入社、米国勤務等も経て、

ディズニー、ケンタッキーと転職し、

最終的にウォルトディズニージャパンのシニアバイスプレジデントに就任された方です。

この本のメッセージは「いずれ日本企業は外資系企業のやり方を目指す」です。

外資系企業に学ばなければ、日本企業は衰退していくというのが各章に渡って書かれています。

 

外資系企業の当たり前は内資系には通用しないのか?

徹底した成果主義の導入と「生産性」というキーワード

3社渡り歩いて、成果主義のシステムがとられているのが個人的には当たり前でした。

例えばわかりやすいのはボーナス。

売上の計画達成率で評価され、数式で支給額が決定します。

僕の当時の給料で計算すると、(今の会社はまだボーナス支給されていない)

最低は当然0、計算上の最高額は600万円を超えてきます。

同期内でも当然大きな差が生まれていましたし、

年齢が上の先輩の年収を上回るなんてこともあったでしょう。

(お互い開示したわけでは無いですが)

複雑な計算式みたいなものも存在せず、

全員が同じ尺度で算出されるので、透明性は高いと思います。

そして最低は「当然0」と書きました。

目標に達成していない人には、ボーナスの支払いが無いのが当たり前だったからです。

このPay for performanceの考え方が基本だと思います。

 

次にキーワードとしてよく出てきたのが「生産性」。

確かにこれも、よく聞く単語でした。

もちろん現場の1営業マンがそこまで意識する事はないですが、

会社の人員は一定の生産性を下回らないようにコントロールされています。

 

事例を一つあげると、地方配属の話題があります。

人口が多いところに市場が集中するのは当たり前です。

そのため都市部の配属人数は多くなりますね。

一方で地方都市の人と都市部の人の市場を合わせるとなると、

地方担当者は広大なエリアを担当する事になります。

移動が大変なんですよ…車で片道200キロ、なんてよくある話です。

疲弊してしまうので、そのエリアに人員補充して…なんて事は過去の会社ではありませんでした。

理由は「生産性が下がるから」でした。会社が規定する生産性に達し無くなってしまうからです。

 

こうなると地方担当者大変だな〜となりますよね?

それでも頑張って売上を上げて、市場が大きくなるとどうなるか?

追加人員が送り込まれるんです。生産性が規定よりも多いから、です。

この場合計画も上がってしまうんですけどね…w

と、このように生産性を重視した人員配置がされているのが通常でした。

 

内資系とは差があるのか?

製薬会社に限って言えば、そこまで大きな差がないと思っておりましたが、

ボーナスの取り扱いは少し異なるようですね。

例えばとある内資系企業の方に話を伺ったところ、

「支店内でトップとビリのボーナスの差が5万ぐらいだった」というのを聞いて衝撃でした。

それはモチベーション保てないんじゃないかな、と思います…

外資系は人に厳しいというイメージがあるようですが、

この場合数字を残した人に優しくないのは内資系企業ですよね。

安定して好成績を残されている方は、外資系企業への転職をお勧めします。

またビリの人もほとんど同じくらいボーナスがもらえるのだとしたら、

言葉悪いですが頑張らなくてもそこそこの給料になりますよね。

みんな頑張らなくなってしまうのでは?という懸念があります。

定量重視の目標設定は外資の基本

みなさんの会社、昇進や昇格はどのような規定がありますか?

実績と経験を総合的に判断して、支店長〜営業部長等が総合的に議論し、

昇進のためのペーパーテストを実施して一定の点数をクリア、

人事部で総合的に判断して昇進、昇格を決定する。

…総合的めっちゃ使いました。

 

僕の今までの経験の場合。

まず過去所属した企業で、ペーパーテストがあった会社は経験がないです。

実績は計画達成率、自社品シェア、判断材料がすでに見えています。

一番わかりにくいのは行動面の評価、

これについても、ジョブディスクリプション(職務記述書)は公開されていて、

昇進するためにはどのような行動が必要なのか、がマニュアルとして配布されていました。

つまりそれらの行動をとり続ければ、行動面はクリアという事になります。

逆に足りていない場合は、評価面談などで欠けている点として指摘されるのです。

 

チームリーダーってなんだ?

役職が多くないのも比較した時の特徴かもしれません。

営業所において、営業所長と呼ばれる管理職がいますね。

その所長以下、MRは全員横並び、職位は同じというのが当たり前だと思っていました。

ただ一部企業では細かく分けていたりするみたいなんですよね。

課長補佐、チームリーダー、主任、等々…名刺に役職が付いている人も居ると思います。

ただこれらは全てMRであって、管理職か否か、程度の違いしかないはずなんですね。

外資系はこの辺りスッキリしている企業が多いと思います。

今の会社も、2つ上ビジネスユニット長ですし、

その上はもう社長ですからね。3回昇格したら社長なんですw

 

目標未達時の取り扱い

未達になった年に、いきなりクビを宣告された社員は聞いたことがないですが、

数年ずっと成績が振るわない人なんかは、PIP対象で追い込まれるのは事実です。

あとは前述した通り、ボーナスの支給額に大きな差が生まれます。

成績が振るわない人は当然支給額も小さくなり、年収ダウンです。

 

本書にもこのPIPについて書かれていますが、

「対象社員にも合っていない職場なので、新しい道を示してあげることは必要」

と書かれていました。まぁ確かに違う仕事なら輝けるのかもしれませんが…

あとはボーナス支給額で、トップセールスマンにきちんと対価として払うという点からも、

足を引っ張る社員は会社の成長を止めてしまう、ということです。

このあたり切り込んでこなかった内資系企業は、生産性が低いことが多く、

結果売上ジリ貧、利益率が悪いなど事例を紹介しています。

 

利益額は死守せよ!コンプライアンスには違反していないか?

本書では大きく取り上げられていませんでしたが、

この2つはかなり厳しく見られているのではないでしょうか。

例えば売上が苦戦して、想定の利益が得られないと判断された場合。

外資系企業にいて感じたのは利益率に対する意識の高さ、です。

本国にコミットした利益額を達成するために、売上が厳しいのならば、

あらゆる経費を凍結して利益額を捻出するのです。

開催を打診していた講演会なども中止、断りに行くことなんかもありました。

出張の全面的凍結、会議はSkypeでという指示が出たこともあります。

欠員が出たエリアにも、今年いっぱい補充はできないと言われたこともあります。

県1人担当のエリアで欠員が出たら、来年補充されるまでマネージャーが回るのです。

 

講演会中止は医師の反感を買いそうですよね。それでも御構い無しに中止の連絡がきます。

開催できないんですよ…なぜなら講演会費用分を、足りない利益に補填しないといけないので…

 

あとはコンプライアンス。これはめちゃくちゃ厳しいですね。

疑わしい行為は社内でもどんどん取り締まりされます。

FCPAってありますね。日本での活動が本国にも影響するのですから、

それはもう厳しく監視されています。

本社からしたら日本法人なんて監視対象の一つでしかないのです。

参考リンク:FCPAとはどのような法律か?

 

業界のルールでNGとされているものはもちろん、

慶弔など内資系は認められているものが、外資系は概ねできないなどもよくあるケースです。

講演会の謝礼金支払いの規定、交通手配の例外を一切認めない、

企業によってはタクシーの乗り降りの場所まで指定しているのだとか。

そしてそれらに違反した社員はどうなるか?

事例が明るみに出た場合、過去知りうる限りでは、

次の年その人の名前はなかったように思います。

 

外資系のやり方が正しいのか?

個人的意見としてはこの通り、外資系企業の判断がスタンダードになると思います。

これだけ買収合併が加速し、新薬の開発難易度が上がっている中、

もしかすると新卒採用すらなくなっていくかもしれません。

事実今私がいる会社は当然新卒採用なんてないですし、

大幅な人員増になることもありません。

規定された生産性の金額があり、ヘッドカウントは決まっています。

新卒採用はリスクです。研修して現場に出るときには、事業環境は変わっていて、

もしかすると過剰人員になってしまっているかもしれないのですから。

 

とはいえ自分も新卒で製薬企業に入社させてもらった人間です。

ありがたく恵まれた環境で研修をして、社会人にしていただきました。

ただこれから先、早期退職など人員整理が始まっている現状、

上記のような転職者メインという採用計画は行われていくと思います。

 

まとめ

・外資系の徹底した生産性と利益重視の考え方が今後普及する(予想)

・Pay for perfomanceの考えは強い。ボーナス納得できない人は転職を。

・「総合的に判断〜」アレルギーの方にもオススメです。

一長一短あると思いますが、

米国始め海外企業が軒並み成長している中、

日本企業の伸びは鈍化しています。

これは製薬業界においても同様の傾向です。

「外資系はなんとなく厳しそうで嫌だな」と毛嫌いする前に、

将来性のある企業へチャレンジするのも一つだと思います。